Mac信者のHackintosh修行

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Hackintoshのパーツ選び 【その3:グラフィックス編】10.13.4以降版

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Hackintosh自作に適したグラフィックスカードを紹介します。10.13.4以降の最新macOSでHackintoshする人向けに、最新情報のみをまとめました。それ以前のmacOSの情報を含む詳しい経緯は、以下をご覧ください。2018年7月17日

siroanko.hatenablog.com

Hackintoshグラフィックスの選択肢

一般的な自作PCと同じ状況なのですが、現在のコンピュータグラフィックスチップは、Intel, AMD, NVIDIAの3社でほぼ独占されています。この中から選ぶことになります。Hackintoshで使うことを検討する場合、

  • IntelのCPU内蔵グラフィックス
  • ノートPCに内蔵されたモバイル用AMDもしくはNVIDIAグラフィックス
  • PCIeスロット用AMDグラフィックス
  • PCIeスロット用NVIDIAグラフィックス

のいずれかになると思います。

このうち2番目の、ノートPCに内蔵されたモバイル用AMDもしくはNVIDIAグラフィックスは、Hackintoshでは使えません。Macと全く同一のチップを搭載したアップル社製品以外のノートPCが存在していないためです。それ以外のモバイル用グラフィックスチップに対して、macOS用のグラフィックスドライバは提供されていません。なので、ノートPCでHackintoshする場合は、Intel CPU内蔵グラフィックスのみが利用可能です。

他の3個の選択肢は、Hackintoshで動きます。ただ、macOS Mojave 10.14からはMetal非対応のドライバが削除されたので、Metal対応モデルを使う必要があります。また、10.13.4からAMDグラフィックスの互換性が向上し、macOSに最初から搭載されたドライバでRadeon製品の一部がそのまま動くようになりました。

このような状況からHackintoshするグラフィックスのお薦め順位は、

  1. PCIeスロット用AMDグラフィックス
  2. PCIeスロット用NVIDIAグラフィックス
  3. IntelのCPU内蔵グラフィックス

になると思います。PCIeスロットに搭載するグラフィックスカードは、互換性のあるものを選べば安定して稼働します。おすすめです。Intel CPU内蔵グラフィックスも安定して動きますが、場合によっては多少のノイズが発生することもあります。

以下で1. 2. 3. のそれぞれについて説明します。

AMDグラフィックス

10.13.4以降のmacOSでは、AMDグラフィックスがお薦めです。AMD Radeon RX 470/480/570/580およびVEGA 56/64の4モデルならば取り付けるだけでそのまま動きます。10.13.4からThunderbolt 3接続の外付けGPUボックスがmacOSで正式にサポートされ、AMDのグラフィックスカードをApple社が推奨したからです。

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 これによると、Polaris, Vega 56, Vega 64の3種類のアーキテクチャがサポートされているようです。具体的なチップは、以下です。

Sonnet社も、10.13.4に対応して、詳細な互換性リストを発表しました。AMDグラフィックスカードを購入する場合は、以下の記事で紹介したSonnetのPDF資料に、互換性があると記されているカードを購入すると良いです。

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とうことで、AppleやSonnetが推奨するAMD GPUを使えば、簡単にHackintoshできるので、お勧めです。このうち、Pro WXシリーズは高価なので一般的なHackintoshからは除外できるかもしれません。また、RX 470/480はすでに廃盤の製品で、後継の570/580はこのクロックアップバージョンにすぎません。なので実質的には、

から選択することになると思います。先述のSonnetのリストによると、ブランドはどこでも同じようです。マザーボードとデザインを合わせるなど、好みのブランドを選べば良いようです。

もっと低価格のRX 560でも動くという報告も多数あります。ただ、Appleは560を推奨リストに挙げていませんし、Sonnetは非互換とマークしています。スリープ復帰などに問題があるという報告もありますので、多少の苦労が発生するかもしれません。

Vegaでは搭載空冷ファンのコントロールが効かず最大スピードになるという報告もあります。それも直せたという報告もありますので、対応可能なようです。

RX 580を使った経験では、しばらく使用すると性能(具体的にはGeekbenchのスコア)が低下する現象がありました。これはCPUの内蔵グラフィックスをonにすると解決しました。 (この性能低下問題はMojaveでは発生しなくなりました。しかし内蔵グラフィックスを無効にするとJPEGファイルがクイックルックやプレビューで開けないようです。内蔵グラフィックスは有効にしておくのが良いようです。)

一般的な自作PCの世界では、AMDの製品は、NVIDIAと比較して上位機種の性能、性能あたりの消費電力で未だに劣っていると言われています。ただ、これはWindowsで使うことを前提にした話です。macOSで使う場合、AMDはOSで正式にサポートされているアーキテクチャなので、色々と最適化されています。例えば、Final Cut Pro Xなどを使って性能比較すると、同じ性能ランクのNVIDIAよりも良いスコアを叩き出します。

NVIDA

NVIDIAは、独自でmacOS用のドライバを開発して配布してくれています。なので、これ (NVIDIAのWebページで配布されていて、Webという名前の含まれるkext群で構成されるのでWeb driverと呼ばれます)を使えば、1080Tiなどの最近のPascalアーキテクチャモデルが問題なく動きます。それ以前のモデルもサポートされています。AMDではmacOSがサポートしてくれるモデルに制限がありますが、Web driverはNVIDIAのほとんどのモデルに対応しています。

Web driverをインストールする作業も簡単です。Web driverはmacOSのバージョンごとに配布されています。機能はそれほど変わらないようですが、macOSのバージョンチェックをして、合致しないビルド番号では起動しません。以下のサイトで、それぞれのビルド番号に合ったドライバのダウンロードURLがまとめて整理されています。

www.macvidcards.com

macOSのビルド番号は、「リンゴマーク」「このMacについて」のOSバージョンの文字をクリックすると、その横に表示されます。下の例では17E202です。

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NVIDIAを選ぶメリットは、Web driverが現行製品のほとんどに対応しているので、高性能なモデルから、安価なモデルまで、選択肢が多いことです。例えば、PC自作ユーザ向けの最上位機種、GeForce GTX 1080Tiはとても強力で、性能あたりの消費電力も低いです。その一つ下のモデルのGTX 1080でも十分強力です。最近発売されたAMDのVega 64でも、性能は1080にある程度追いついたものの、価格と消費電力で負けているようです。特に、Windowsと併用するとか、Windowsでグラフィックス性能を必要とするゲームをするなどの場合は、NVIDIAを選ぶことにメリットがあります。

グラフィックス性能は不要という人も多いと思います。普通にGUI操作したり動画を見る程度では、グラフィックス性能は問題にならないのも事実です。現行のNVIDIA製品の最下位GT 1030を使用するのも良いでしょう。ファンレスモデルもあります。

1030はローコストだけど性能は高いようです。

androgamer.net

Web driverのおかげてNVIDIAならどれを選んでもだいたい大丈夫ですが、中には多少相性の悪いモデルもあるようです。例えば、GTX 1060はスリープからの復帰でノイズが出る問題が指摘されています。

https://www.tonymacx86.com/threads/05-02-added-temporary-fix-pascal-gtx-1060-glitching-after-waking-from-sleep.220670/page-8

今後、すぐに対応されるとは思いますが、その上位・下位の別モデル、1050tiや1070を購入した方が良いかもしれません。

Keplerアーキテクチャ

NVIDIAでもKeplerアーキテクチャとそれ以前の古いカードになると、Web driverなしでも動くモデルがあります。昔のmacOSではNVIDIAを採用していたので、Web driverを入れなくても(入れても機能します)macOSの標準ドライバだけで動きます。OSのバージョンアップに伴う新Web driverの発表を待つ必要もありません。(もっともNVIDIAの対応はとても早くで、24時間くらいで新OSに対応してくれますが)

ただ、Mojaveが対応しているiMacに搭載されているNVIDIA GPUがGT 640M/650Mあたりの型番なので、Keplerアーキテクチャ世代にしておいたほうが無難です。できるだけ安く探すとなるとGT 710とかGT 730あたりでしょうか。

Intel CPU内蔵GPUは使えるか?

MacintoshIntel CPU内蔵GPU (iGPU) を使っている機種は多数あります。これらと同じGPUは問題なく使用できると考えて良いです。純正Macで採用されていないIntel GPUも、近いモデルならば動くことがあります。

MojaveからはMetal対応のGPUのみがサポートされるようになります。Sandy Bridge以前のIntel CPU内蔵GPUは、Metalに対応していません。Ivy Bridge以降のCPUならば大丈夫です。ちなみにMojaveをサポートしているiMacが搭載しているデスクトップ向けIntel HD Graphicsは

です。Intel UHD GraphicsはMojaveからサポートされています。

ただCPU内蔵グラフィックスは、 時々画面が乱れるとか、スリープからの復帰に失敗してハングするなどの問題も報告されています。互換性のあるPCIeのグラフィックスカードの方が安定しています。もともと、Intelのデスクトップ用CPUの内蔵GPUはモバイル用に比べて非力です。トラブルに遭遇したら「モバイル機種に負けるようなグラフィックスは使わない」と考えてPCIeグラフィックスカードを検討するのが良いと思います。